海の森プロジェクト(東京港中央防波堤内側埋立地)の事例
東京都江東区青海 3 丁目地先/まだ正式な住所はありません。 東京都港湾局が「市民参加」により植樹を行いました。植樹そのものは、平成 27 年度をもって終了し、現在は、広場部分の造成が行われています。
事務局が用意したマイクロバスに乗車し、目指すはゴミの埋め立て地となっていた海の森 造成現場です。東京都 高遠様が加わり、現地説明が行われ現状を理解することができました。
海の森プロジェクト
http://www.uminomori.metro.tokyo.jp/index.html
13:40 ~ 14:30 東京港中央防波堤内側埋立地(東京都江東区青海3丁目地先)
海の魅力を生活者・都民に 1970年代からスタート
海の魅力を広く都民の方々に知っていただくために、さまざまな工夫が行われてきたことを感じる現場でした。
東京港は日本の経済成長と合わせて、求められる役割に大きな変化があったことがあげられます。経済成長期には、魚を取るための場や海に親しむ場だけではなく、機能的に東京港の強化が迫られました。
昭和30年代の地図と現在の東京港の地図を比較すると埋め立て地、その痕跡が良く表れています。同時に東京港としての機能と生活者が親しむ機会の変化です。経済成長期に期待された港としての機能と生活者の海への思い・期待のかい離が大きくなっていきます。
港の機能拡張による沖合展開と共に身近にあった都民の暮らし中にある海の魅力が薄れていきました。東京都は海の魅力を取り戻すためにも、昭和45年、東京都海上公園構想を立ち上げ、東京港に計画的に公園設置、公園整備を行ってきています。
現場を視察して、360度見渡すと、羽田空港、東京港荷役施設、臨海副都心、ゴミの埋立地が立地していることが良くわかります。さらに常に旅客機などが上空を往き交っています。
今の東京湾に生活者が親しむシーンを見ると潮干狩りやサーフィンやボート競技、釣りなどを思い浮かびますが、少し遡ると、幕末のころ歌川広重などが描いた品川宿の浮世絵に気が付きます。東京の海はよい漁場だけではなく、人々の暮らしの中で風光明媚の場所であり、アウトドア レクレーションの場として魅力があることを示しています。
現在、東京湾では都民や生活者が親しむ場は公園になります。高遠氏によると「東京湾にある公園は全部で800ヘクタールにのぼり、その一つにこの海の森公園も含まれています。特徴的なのは、海も公園の一部にするという発想です。」と解説してくれました。
この公園では造成工事が最盛期を迎えています。公園の外周部を外輪山のように森が取り囲み、中央部の平坦地は二つに分かれ草原と林といったエリアで構成されています。特に施設ができるわけではなく森が主体となります。
平成20年から順調に植樹が進行し、最近では、平成27年10月末に3,000人の方が集まり苗木を植えています。23区内の山の中で標高は、都立戸山公園の箱根山が47メートルと最高ですが、この海のエリアは、まだどの区の所属になるのか未定となっています。当該公園の帰属が仮に江東区になれば、私たちが訪問した展望山の頂部が同区内で標高がいちばん高い山となります。
現資源循環 再利用の実施
海の森を形成するのはゴミの堆積が最初の起点になります。昭和40年代から60年代まで一般ごみの最終処分場になった場所です。30メートルまでゴミを運び入れています。その上にトンネル工事などの建設残土などを活用し、これに肥料を混ぜて木々に適した土として造成されています。
東京都が力を注いできたのは、公園整備にあたり資源循環による工事の努力です。肥料は、東京23区内の公園の剪定作業で生じた枝葉を利用して都が堆肥を作る場所を提供し、都内造園業者さんと協定を結び、団体堆肥づくりを行う、さらに、年度ごとに発注する公園の造成工事を受注した業者さんが出来上がった堆肥を使って植樹に適した土づくりを行っています。資源循環の工夫が行われていました。
ゴミを美しい森に変え次の世代にバトンを渡すプレゼント作業:高校生と幼稚園生が一緒に植樹し森づくりを行う
海の森プロジェクトのコンセプトの中に、ゴミの埋め立て地を森として次の世代の空間としてプレゼントしようという視点があります。この発想が植樹による森づくりに活かされています。次世代の子供たちのための、長い時間軸でのプロジェクトです。森だけが残り、「生い立ち」を忘れさられないためにも、高校生と幼稚園生が同じ時空間で植樹を行うことにより、「生い立ち」の思いが、世代間を受け継いで育っていく願いがその活動にはありました。海の森倶楽部の会員(詳細はhttp://www.uminomori.metro.tokyo.jp/club-top.html)と一緒に生い立ち、思いを知ってもらう活動を行っている点です。
海の森倶楽部の会員企業と一緒にイベントを開催
既に、東京都は海の森倶楽部の会員企業と一緒に累計30のイベントを実施し、参加者5万人を数えます。この機会を利用して、参加していただいた方に、海の森の生い立ちを知ってもらう活動を実施しています。開催したイベントは、「植樹体験」や倶楽部会員企業によるイベントで、「COLOR ME RAD」 (5色のカラーパウダーを身にまといながらゴールを目指す、ランニングイベント)などが実績となっています。
オープンは2020年以降の予定でオリンピック後
海の森公園のオープンは、工事や安全面の配慮からオリンピック後の2020年以降となっています。オリンピックでの活用は決定し、馬術競技の仮設会場予定地で、林を抜けて馬が走るといったクロスカントリ競技の会場予定地となっています。周辺海面は、海の森水上競技場となりボート、カヌー(スプリント)競技が予定されています。一般開放までは、コンパクトなイベントは継続して実施する予定となっています。
現地で東京都・高遠氏との質疑応答が行われました。以下にその内容を紹介します。
また、今回は海の森の現況を中心に見学いたしましたが、海の森倶楽部の企業会員は49社に登り多くの人たちにより支えられたプロジェクトになっていることを附記しておきます。
《Q&A》
苗木を集める仕方:植樹の苗木は、ボランティアの方がさまざまな形で周辺の木々などから種となる「どんぐりの実」を拾い苗木を育てて植樹を行ったりしてきました。さらに、平成19年から開始した「緑の東京募金」を実施し、募金から苗木を購入し植樹に役立てたりしています。
生き物調査:生き物調査は毎年と5年ごとに動植物の調査を実施しています。鳥類はカラスが多く、トンビ、水鳥などがみられます。またイベントの一環として雑草などの外来種は除去作業を行なったりしています。
アクセス:一般の方は現在、どのように来場できますか?
イベントの時に参加していただくのが最も便利です。基本的には、工事中ですので、ぶらりと来ても入れない状況になります。当面のアクセスはイベント主催者によるバス又は自家用車の利用が想定されています。埋め立て地としてのニーズが高まれば、何等かの公共交通機関の検討可能になります。
植樹の木々の種類:50種類の木々を選定し関東の海辺に自生する木を植樹しています。具体的にはコナラ、タブの木 スダジイ、黒松など ハゼの木、やまももの木、大島さくら、グミの木などがあります。常緑樹が中心で植え方は同じ種類の木をまとめて植えることにより、それぞれの種類の木々が育ってくれることをできると考えています。美しい森を育てるという範囲で森としての管理の間引きを考えています。
ボランティアの協力のお願いの仕方:植樹のボランティアの方へアプローチは、さまざまな方面にお声掛けをして協力が得られていきました。公募による参加者が多いのですが、例えば学校関連、経団連の自然保護部会などにもお声掛けをしました。
メタンガスの発生:焼却ゴミの投入が多いのでガス発生は、若洲などと比べると、とても少ないです。微量ですがガスの発生地点が一ヶ所ありパイプラインを通して、収集し発電に利用しています。一世代前の若洲の埋め立て地の場合は生ごみの投入が多く、メタンガスの発生量も多いのが実情です。
NPO法人リトルターン・プロジェクト事例
東京港中央防波堤内側埋立地を後にして、向かったのはコアジサシの営巣地となっている東京都下水道局が管理する森ヶ崎水再生センターです。
一つの出会いやきっかけ・事象が大きな結果を生み始めていると感じられる訪問になりました。そこには想像していた以上に広い屋上営巣地が広がっていました。
コアジサシの営巣支援と水再生センターの協力
15:10 ~ 16:40 東京都大田区昭和島2-5-1【森ヶ崎水再生センター説明及び見学】
・屋上コアジサシ営巣地
・水再生センター 西施設
野鳥・主役はコアジサシです。この時期は旅立ちをして、今は跡地でしかありませんが、また、時期になると飛来してきます。
2015年の営巣経過
2015年、ここにコアジサシが2,000羽飛来し、1,531の総営巣数があり、雛が2,200羽生まれて、そのうちの1,100羽が巣立ちました。日本の中で最大の規模だと思われます。
2002年に最初の営巣地が、大田区と東京都下水道局の協力をえることにより実験的に整備が開始されました。当初は、下水処理の過程で発生する汚泥を焼成したスラジライトを引き、2ヘクタールの広さでした。(屋上の下段にあり写真には写っていません)
きっかけとなったのは、(NPO法人東京港グリーンボランティア・八木代表説明、NPO法人リトルターン・プロジェクト・松村理事説明)森ヶ崎の鼻干潟の鳥類調査中にたまたま、小魚をくわえたコアジサシの飛んでいく方向を観察して、施設屋上で営巣している状況を見つけたのが最初になります。営巣していた屋上は、コンクリートむき出しで何もないので風で卵が飛ばされているのが現況でした。
東京都にも文書で保護・整備などの要請をする活動の中、森ヶ崎水再生センターのご理解をいただき、屋上営巣地整備を進展することができました。行政サイドに理解力のある担当の方がいらっしゃったのが、大きく進展した結果です。また、屋上営巣地整備作業には多くのボランティアの方にお手伝いをいただき、当時水再生センターで作っていた「汚泥を利用したレンガ」を営巣地で利用したり、貝殻を千葉からとりよせるなど、営巣しやすい工夫をおこなってきました。
また、コアジサシの飛来には、増減数があるため、最初の段階の2002年から2003年にかけての飛来数は多く、その後、減少し少ない場合などもありました。大田区の運動場用地候補の計画やコアジサシの飛来数減少にも関わらず、森ヶ崎水再生センターにはご理解をいただき、コアジサシ営巣地として継続した整備を行い、現在に至ります。
さまざまな工夫による営巣環境の整備活動
現在までにコアジサシの営巣しやすい、好んで営巣する状況を作り出す活動を行ってきました。さらに営巣状況を調査しやすいように、エリアを区分けしながら研究しています。
営巣地は夏の状況化下(最も暑いとき屋上営巣地の表面温度は55度になる)の中では、卵が茹ってしまいますので、卵を保護する意味でも貝殻をまいています。貝殻には温度を下げる効果もあります。
水場を作り、卵の温度調整のために親鳥が水で冷やすことに使用できるなど工夫をしています。これにより親鳥が巣から離れる時間を少なくしています。
また、カラスに狙われることが頻繁に起きるため、カラス除けのいやがらす(2013年にから設置、ステンレスのスプリングの真ん中に羽がありくるくる回る仕掛け)を使いカラス侵入防止を行っています。この効果は大きく、卵や雛がカラスに食べられるが少なくなり3年連続で、巣立つ数が増えています。
★見学者からの質問に寄せて
今年は屋上全体で832体のデコイ(木の模型)を設置し、コアジサシの営巣地として安全だとアピールをしています。また同じような環境で繁殖をするコチドリやシロチドリなども営巣しています。
コアジサシは、最近では千葉県の三番瀬に集まり、一斉に渡っていきます。2015年8月の集結は3、000羽程度でした。5〜7月の繁殖期、卵は3週間ほどでふ化します。ヒナは20日間くらいで飛べるようになりますが、両親の給餌を受けながらさらに成長し、8月~9月には南の国へ渡っていきます。ここ以外の東京湾内の営巣地として葛西臨海公園西渚などがありますが、繁殖があまりうまくいっていないのが現状です。
今までの活動では、その都度募集を行いボランティアの方にお手伝いをいただいています。今年は飛来数も多く、ボランティアの方も延べ500人以上に上ります。
このような活動は、企業からの協力、例えば貝殻は、鹿島建設と五洋建設の方に運んでいただいたり、さまざまなグループの方々の支えにより成立しています。他にも同様な候補地があるとしても、結局のところ中心になる方がどれだけの広がりを作り出し、協力していただけるかにつながっていきます。また、営巣環境だけでなく周辺の採餌環境も重要なファクターになります。
最近では各地から問い合わせを受けて出かけていき、興味のある団体へのアドバイスなどの活動も実施しています。
また、毎年の調査結果を踏まえ屋上営巣地の改善を行ってきています。雛が隠れる場所などシェルターを作ったりしているのもその一つです。さらに交流会を実施して、下水処理の話題とコアジサシの話題を実際に取り上げてきました。PR面でも協力関係を取り上げてもらい、相互の関係性の中でまったく異なった活動の中での意味を見出す努力をしています。
一般の方が観察できるのは、6月の終わりと7月の初めの年2回の観察会です。
詳細は、http://www.littletern.net/index.htmlにお問い合わせください。
1.開催日時 | 平成27年12月10日(木)13:00~17:30 | ||||||||||||||
2.開催場所 | 東京港中央防波堤内側埋立地/海の森プロジェクト および 東京都大田区昭和島/森ケ崎水再生センター |
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3.主 催 | 東京湾再生官民連携フォーラム 事務局 | ||||||||||||||
4.協 力 | 東京都港湾局、東京都下水道局、東京都下水道サービス(株) NPO法人樹木・環境ネットワーク協会、NPO法人リトルターン・プロジェクト |
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5.プログラム |
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